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2013年3月13日 (水)

小沢健二「ラブリー」

小沢健二の名作アルバム『LIFE』に収録されている名曲「ラブリー」


小沢健二「ラブリー」

歌手として評価すると、声が細くてなんつーか時々恥ずかしくなるような部分を持っているんだけど、それが楽曲によく似合っていてオザケンワールドの中ではこの声が歌唱力が大正解になっている。
雄弁すぎる歌詞にエッジの利いたいわゆる渋谷系とカテゴライズされた音楽のど真ん中直球の曲は、1994年のリリースからあっという間に19年も経ってしまったが、未だに古びないこのオシャレなセンス。

時代的にはバブル崩壊直後だけど、まだまだバブリーな空気が濃密な時代で、小室サウンドみたいなリズムでグイグイ来る曲が多かった時代に、オッシャレーなサウンドで僕らのハートはノックダウンされちゃったのさ。
他にはこの頃、オザケンはスチャダラパーとの「今夜はブギー・バック」とかCM曲「カローラIIにのって」とか話題作がいくつもあって、自分もかなり影響を受けた。

倖田來未「ラブリー」

で、この曲、最近になって倖田來未がカバーしている。カバーアルバム『Color the Cover』収録曲として。
それを聴いて「確かに歌唱力では倖田來未の方が何倍も上なんだろうけど、何か聴いていて全然楽しくない、ウキウキした感じがしない」と思ってしまった。
アレンジがそれほど変化していないって事もあるんだろうけど、なんか歌自慢の人がカラオケで歌っているような気持ちになってしまった。
イヤ、充分に倖田來未Ver.も商品としての価値がある作品ではあると思うんですが。

大橋トリオ「ラブリー」

ここ数年、カバーというものが一つの音楽ジャンルとして成立して、それなりに売れている。
井上陽水とかもカバー曲だけのアルバムを作っていたけど、この流れを最初に作ったのは稲垣潤一っすかね?
他に中森明菜もシリーズで出していたし、最近では徳永英明がカバー専門歌手的な状態。
でも個人的にはあんまり歓迎しない。
別にオリジナルの曲を作って歌うのが偉いとか思わないんだけど、オリジナル曲にはほとんどの場合が勝てない、勝てていない、気がする。
だからアルバム単位でカバー曲をたっぷり聞かされるのは個人的には苦手。アルバムに1曲か2曲ぐらいカバーが入っているのはアクセントとして面白いとは思うんだけど。

jackson vibe「ラブリー」

そのカバーも、原曲とほぼ変化のないアレンジの「これカラオケ?」みたいな場合と、原曲から無闇と離れようと考えすぎてトンデモなアレンジにしちゃう場合もある。
なぜカバーしようと思ったのか、なぜこのアーティストがやる必然性があるのか、どれだけ他人の曲、他人のイメージが染み付いた曲をそのアーティスト側に引き寄せているかってのが自分の場合、気になってしまう。面倒くさい聴き方だとは思いますが。
楽曲を作る場合、プロのライティングとして「歌う人」を中心に曲が作られる。その歌手に合っている世界観か、メロディ回しがその人にとって気持ちいいかなど、色々な要素でもって組み立てられている(最近の曲はそんなに深くないのかもしれないけど)。だから他人のイメージで作られた楽曲を別人が歌う段階でハンディがある。耳慣れた曲だから受け入れられ易いって事じゃなく、ハードルは高いんじゃないかと。
そんな事を倖田來未のラブリーを聴いて再び思ってしまった。

Michelle143「ラブリー」

で、このラブリーは意外なほど多くの人にカバーされている。
それだけ多くのひとの心を捉え、さらに自分の世界観の中に取り込みたいと感じさせる名曲なんだと思う。メロディーの持つ柔らかでしなやかさ、緩急のある素敵な展開がサビへスッと向かっていく、それに歌詞がほのぼのと穏やかに深い感情を普遍的な言葉で語っていく。
でも多くの人に歌われ、そのカバーVer.を聴いて感じるのは結局「オリジナルはいいな」という事なのかも知れない。

Betty Wright「Clean Up Woman」

と言いつつ、渋谷系はサンプリング・引用の遊びが多く「ここから持ってきたか」とかネタ捜しも醍醐味の一つ。
アレンジは完全にBetty Wrightの「Clean Up Woman」という曲からの引用。歌メロディはまったく小沢健二のオリジナルなんだけど、イントロはまんまでイントロ当てクイズではかなり難易度が高い、歌が始まった後はギターカッティングがチャッチャラッチャッチャッと同じ感じに刻んでいく。この元ネタに関してはオザケンも悪びれる感じなく語っているので、そう言うジャンル的なインスパイヤなどで作られている曲という事になる。

Sam&Dave「Soul Man」

もっとも「Clean Up Woman」のギターカッティングのさらなる元ネタはSam&Daveの超有名な曲「Soul Man」だと言われている。この辺はもう全部気持ちいい音だからどうでもいいやって感じになっちゃう。

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