クイズ番組の明日『WQC』
先日、11月23日水曜日に『WQC(World Quiz Crassic)頭脳の祭典!クイズ最強王者決定戦』という番組が、夜8時からの3時間スペシャルとしてTBSで放送された。
基本的に自分はクイズ好きという事もあって楽しんで見る事が出来た。
でも異常なほど番組のハードルを上げて「すべてのクイズ番組は、この大会の序章に過ぎなかったのかもしれない」とキャッチコピーを掲げて、異常なほどの高級感とアスリート感満載って所が凄く不安だった。
自分はクイズというのは気楽な遊びだと思っているんだけど、出場者はそれぞれ人生を抱えているかのような盛り上げで登場して、「そこまでクイズに入れ込まなくても」とちょいと引いてしまうような感じもあった。
クイズをやるために時間が拘束される正業に就かずフリーターを選択した人、クイズをするために毎日何紙も新聞を読み生活の中心を知識を詰め込む為に使っている人、などなど。
この番組でも、他の場所でもよく聞くのが「最近は一般視聴者が参加するクイズ番組が激減して活躍の場がない」みたいな事。確かにふと思い返しても「アタック25」ぐらいかな? 昔は「ベルトクイズQ&Q」「アップダウンクイズ」「国盗りクイズ」「クイズハンター」等々、素人参加型のクイズ番組がやたらと多かったような気がする。
自分なんかはそれを子供の頃から見て育ってきたクチで、夏休みになると「小学生大会」とかがあって「いつか出場したいなぁ」と思いつつ大人になってしまったワケです。その時代にクイズ好き、そこから雑学的な物が好きになっていったのかも知れない。
で、今回のクイズ新時代を開くという番組。結果として平均視聴率は7.9%でTBSの思わくをグンと下回ってしまったらしい。特に番組出だしが3%スタートだったとか。
これに関しては番組編成の失敗だと思う。
なんせその日の裏番組がNHK『嵐の明日に架ける旅』日テレ『ザ!世界仰天ニュース』フジ『はねる×ホンマ!?×123合体』朝日『ナニコレ珍百景』とすべて7時台からの2時間以上番組ばっかり。8時にチャンネルを変える人は最初からこの番組を楽しみにしていた人ばかりという状態。そりゃ出だしが悪ければ、それは後まで響く。
そして8時台の比較的簡単な問題ではなく、途中からチャンネルを変えて来た人はいきなり後半戦の「アホじゃねえの」と思うような超難問から見始める事となるので「ワケ解らん」となってしまったのでは無いかと。
でもその中で出場者達はアスリートのように脳細胞を活性化させガンガンと闘い抜いていく。
と、いう部分が視聴者参加型クイズ番組を無くしていく原因なんだよなぁ
確かに超人的な頭脳というのは見ていて凄いんだけど、そう凄いと思う気持ちは持続しないと思う。
自分はこういう仕事をしているので最後まで面白く見ていたんだけど、一般的視聴者はどうなんだろ?と思ってしまう。
たとえば第二試合辺りの少しハードルが上がった難問で「もう難しすぎて全然答えられない」と思ってしまった人は、次の試合でさらに問題のハードルが上がった時、第二試合と第三試合で難易度が上がったのがあまり解らなくなる。出題している側は徐々に問題のグレードを上げているつもりなんだろうけれど、途中で「なんじゃそりゃ」と思ってしまった人にはそこから先の盛り上がり方が理解できなくなる。
例えば本当のスポーツ系アスリート番組だったら、単純に跳び箱の段数が増えた、距離が伸びたとか明確に凄さが判るんだけどクイズの場合はその差異が解りにくい。とにかく間違えずによく解らない事を即座に答えているというだけの展開。お茶の間はあんぐり状態だよ。
この手のクイズ番組を作りたいと思う制作者もハードなクイズオタクだと思うので「テレビを観ている人は一般的な感覚の持ち主」という部分が抜けちゃっているんじゃないかと思うわけです。
これは自分が雑学をラジオで喋っている時に一番注意している点。
長年雑学を扱っていると雑学ドランカーになってしまい「この雑学はみんな当然知っているよな」と思ってパスしようかと思ってしまうワケですが、とりあえず流れの中で入れてみると、そこが一番「そうなんスか?」と驚かれたりする。
それを5年間ラジオで1000回近く喋ってきて肌で感じるようになり、一般的な感覚を凄く重要視するようになってきた。
でもおそらく雑学が好きな人がそのラジオを聞くと「なに誰も知っているような当たり前の雑学喋ってんだよ、あんなのなら俺でも出来る」とか思われてしまうんだろうなぁ。
でも一般的な感覚が一番大切。
だから長く続いている『Qさま!』なんかでも「中学校の教科書に出てくる偉人たち」みたいな問題が出されて、答えが出ると「あ〜〜〜そんな名前だったぁ」という視聴者テレビ前参加型クイズ番組になっている。
そして今回のWQCには芸能人枠もあってジャルジャルの後藤とかカラテカ矢部とかも出場していて、ネット内では「芸能人が出てくる意味ないだろ」とか「緊迫感が薄れる」とか不評だったみたいだけど、実際には視聴率的にはその芸能人が出てリアクションする所が良かったりするんじゃないかと。
例えば『Qさま!』でも難解な問題に片寄り勝ちになっても、出演している芸能人は不正解でもリアクションが上手で盛り上げてくれる。
リアクションが取れない局アナが不正解して落ち込んでも、それを持ち上げたりネタにして「バラエティ番組」としての体裁を作り上げてくれる。
時々「この人、芸能人なの?」みたいなクイズ番組でしか見かけない「東京大学在学中のタレント」みたいな人がいるけれど、あれなんて事務所側がクイズ番組の為にスカウトした人なんじゃないかって感じもする。そして、その手の人はリアクションも上手じゃなくいつの間にかいなくなる。
クイズマニアの出演する番組はみんなマジすぎて、バラエティとしての面白みはどんどん無くなっていく。
超難易度の高いクイズも否定しないけど、あくまでもテレビで放映されるクイズ番組は「バラエティ」なので、クイズマニアの求めるクイズはテレビサイズでは持てあましちゃうんだと思う。
今回の「WQC」の第2回が存在するかどうかは今回の視聴率を考えると微妙なんだけど、純粋にムチャ凄いクイズ王の登場なんてのを視聴者は求めていないんじゃないかと思ったりする。
てな事を言いつつ、実は自分は読売新聞Webでクイズ連載をしている。
他にミリオネアに関わったりした過去もあるし.....
さらにiPhoneアプリで『知泉の雑学クイズ』というアプリを4本出していたって事まで、自分でもスッカリ忘れていた。
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