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2010年2月13日 (土)

国生さゆり『バレンタイン・キッス』

2010021301国生さゆり『バレンタイン・キッス』
作詞:秋元康/作曲:瀬井広明
1986年02月01日/¥700
CBS SONY/07SH 1736


明日は特別スペシャルデイ♪ ということでこの曲は「バレンタインデーの前日を歌った曲」ですぜ。
先日は受験生をターゲットにしたお菓子業界のさもしい戦略を書いたけれど、それが過ぎるとバレンタイン絡みのさもしい戦略が始まる。
一般的に日本式のバレンタインは1958年の伊勢丹にバレンタインチョコが登場したのが最初とか言われていますが(メリーチョコレート製)、この時はセール中に売れたバレンタインチョコは50円の板チョコ3枚と20円のメッセージカード1枚だけでした。さらに翌年ハート型のチョコを販売し始めている。
それ以外の話として、モロゾフが1936年2月に日本で発行された英字の雑誌に「バレンタインチョコレート」の広告を出したのが最初とされていますが、もっとも古いとされているだけで、これは定着するキッカケにはなっていません。
実は伊勢丹でバレンタインチョコを始めたメリーチョコレートの社長・原堅太郎氏はもともとモロゾフでチョコレートを作っていた職人という繋がりがあります。

戦後、1949(昭和24)年に渋谷で高級チョコなどを製造販売をする「有限会社USチョコレート研究所」を作ったのですが、翌年倒産し一家心中直前まで追い込まれます。その後1952(昭和27)年にメリーチョコレートカムパニーを設立しています。
このバレンタインデーのチョコレートはモロゾフで修行していた社長のアイディアではなく、当時23歳で大学卒業を直前に控えていた次男の原邦生氏がパリ留学をしている先輩から聞いた「バレンタインデーにはチョコレートや花にカードを添えて交換する」という物から考え出したそうです。

実は、1936年のモロゾフよりもっと前に1868年にイギリス・キャドバリー社がバレンタインに絡んでチョコボックスを販売したという話もあるので、起源はよく判っていない。でもキャドバリーにしてもモロゾフにしても、メリーチョコレートにしても「女性から男性」とは言っていない。
いったいいつの間に「バレンタインデーは女性が男性にチョコレートを贈って愛を告白する日」という話になってしまったんだ?」

201002130470年代初期に発行されたいたTSURU COMICのスヌーピーが出てくる「TSURU PEANUTS BOOKS」でもチャーリー・ブラウンが「バレンタインを待っている」という話が出てきたような気がするけど、小学生だった自分はそれが何の事なのか判らなかった。手元にある数冊をパラパラと見てもその手の話は発見できなかったが、1990年から角川が出したシリーズでは2月になると毎年のようにバレンタインネタが出てくる。
1巻では1987年2月の話が掲載されていて、毎日郵便受けの処でチャーリー・ブラウンが「配達されるバレンタインを1通残らず見とどける…」と座り込み、翌日は郵便受けの中に潜り込んで待ち続けている。
3巻では1988年2月の話で、ライナスが後ろの席に座るエキセントリックな子リディアと会話をしているが「君が住所を教えてくれないんだから」とライナスがバレンタインを送る事が出来ないとヒスを起こしている。最終的には郵送ではなく手渡しでハートの絵がついたカード(ノートの切れ端にも見える)を渡している。
5巻では1989年2月の話で、チャーリーが片想いをしている赤毛の女の子にバレンタイン・キャンディをプレゼントしたいけれど勇気が出せずに諦める話が書かれている。

2010021305
ここではプレゼントするつもりで持っているハート型の容器に入っているのは「VALENTINE CANDY」と語っているんだけど、それをスヌーピーが物欲しげに見つめていると「君にあげてもいいんだけど、チョコレート(CHOCOLATE)は犬にはよくないんだ」と語っている。英語圏内ではキャンディというのは飴という意味だけじゃなくチョコレート菓子も含まれていて、キットカットとかスニッカーズみたいな物はキャンディバーと呼ぶ。
これから見ていると、やはり今でもバレンタインに女性から男性というのは日本だけのアイディアで、チョコはなんとなく結びついているという感じなんですかね?

自分の記憶でいうと、中学時代ぐらいまではたしかにバレンタインデーなんて風習は存在していたけれど、そんなに誰も彼もという感じではなく「4組の高田修が3組の鈴木里子からチョコ貰ったらしいぜ」という事がザワザワとウワサされて、ちょっとおませな女の子が意を決して!みたいなレベルだったような気がする。もともと付き合っている二人は別として。
70年代後半、自分が高校の頃はそこそこ一般的になっていた様な気がする。自分は当時ギターなんてのを弾いてジャカジャカやっていたので、勘違いした女子からチョコを貰った経験もあるけど、あんまり今みたいにお祭り状態ではなかったハズ(田舎の高校だから一般的な話では無いっす)。
義理チョコなんてのも80年代に入っての話で、1986年に国生さゆりが「バレンタインキッス」を歌った頃はおそらく今みたいにバレンタイン商戦もあったし、義理チョコも存在していたと思う。

バレンタインという単語は「My Funny Valentine」という曲に登場するけれど、これは1937年に発表されたミュージカルの曲にも使われているスタンダードナンバー。そのタイトルの「Valentine」は「愛しい人」と訳される。
1937年と言えば、その前年の1936年にモロゾフが日本向けの英字雑誌で「For You VALENTINE Make A Present of Morozoff's FANCY BOX CHOCOLATE」と書いているので、何か関係あるのかなぁとは思う。
ちょっとすぐに文献を取り出せないのですが、この「VALENTINE」というのは元々フランスにあった古典的な恋愛喜劇に登場する男性の名前で、その関連から「愛しい人」を指してバレンタインというようになったという話を読んだ事がある。
そして、この広告を出したモロゾフさんは元々ロシアの宮廷料理人で、1920年代に神戸にやってきてチョコレート菓子店を出したのですが、その息子さんの名前もバレンタインだったそうです。
なんか、色々な情報が交錯してハッキリとこれがこうで!と説明できないのがもどかしい話ではあります。

2010021302そんなこんなで今やバレンタイン業界(そんな業界あるのか不明ですが)も飽和状態で、さらなる販路を拡げようと「今や女性が男性にバレンタインチョコを贈るのは古い!これからは男性から女性へ逆チョコだ!」という商品も登場している。
とりあえず通常商品の『小枝』のデザインを逆版にして逆チョコという事になっている。ここまでやるんだったら「これ逆チョコです。」とか「デザインの一部を反転させています」なんて断り書きをパッケージにそのまま入れるんじゃなく、シールとかで表示して、購入者がそのシールを剥がせば何も説明なく全部反転したパッケージになるぐらいに完璧にした方がいいのになぁ、なんか中途半端。
しかし逆チョコということで「逆チョコとは!? 日頃の感謝の気持ちを添えて、男性から女性に贈るチョコレートのことです」って恋愛がらみじゃないのか!

それ以前に女性から男性って話も勝手に捏造された風習ですから。
そもそも最初は「女性から告白するなんて恥ずかしくて出来ない、でもバレンタインだけは女性から告白するのも許されているのです」みたいな事が70年代の「少女コミック」や「別冊マーガレット」なんかに書かれていたワケで、それを逆にするってどういう事よ。

2010021303この風習を廃止しよう!という非モテ男子の声が毎年あがるワケですが、女子の間でも「義理チョコが大変」とか「なんかやらなくちゃイケナイ気になって面倒」という声もあがっている。
自分的にも、どーでもいいイベントなんですが、ただ一つ迷惑なのがこの時期、買い物にいくとやたらとチョコが目に付くので食べたくなってしまうのですが、このタイミングで男が購入するのはなんか淋しいよなぁと自意識過剰スイッチが入って購入を断念してしまうという事なのです。

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コメント

なつかしー。ツルコミック版のピーナツブックスだ。
過去に数冊持ってました。ページの裁断面が黄色いんだよね。
現在の日本版の版元は、角川書店でしたっけ?

好きなキャラクターは人それぞれでしょうが、
僕はなんといってもチャーリー・ブラウンです。
手をにぎると、しゃべるフィギュアを持っているほど。

何をやらせてもダメな主人公ですが、
常勝のみに邁進するアメリカ発のモノとしては、
敗者側からの視点が新鮮で、大いに共感できました。

バレンタインがらみで言うと、
とり・みき著『るんるんカンパニー』のエピソード、
「チョコレート暗黒時代!?」は名作だと思う。

2月14日は「ニボシの日」(知泉2より)でもありましたよね。

投稿: はしもと | 2010年2月13日 (土) 22時33分

さすが、精緻な検証。flair
どこかの馬鹿が、モロゾフの広告を
“バレンタインデーにはチョコレートを贈りませう”
と書いていました。1936年だから、大方旧仮名遣いだろうと捏造して、墓穴を掘ったわけです。

投稿: SHIN | 2010年2月14日 (日) 06時35分

初期TSURU PEANUTS BOOKSを調べてみますと5巻「ゴッツン!!ライナス」(1969年鶴書房)にバレンタインネタがありました。バレンタインカードを交換してる友人たち(男女)を見たチャーリーブラウン。「つまんない!だれもボクにバレンタインカードくれないのか!」「バレンタインデイなんてなけりゃいいのに……」「だれにも好かれてないってことよーくわかってるんだ……」「でもどうしてバレンタインデイでそれを強調しなければいけないんだ?」
もひとつ「きのうねバレンタインカード30枚もらったの!あなたは何枚もらった?チャーリーブラウン」「ボク?ボク?ボクだって?!」「ハ!ハ!ハ!ハ!ハ!ホ!ホ!ホ!ホ!ホ!」以下狂騒的に笑い続けるチャーリーブラウン。
この巻は1963年刊行の「You Can Do It, Charlie Brown」からのセレクションですから、もとのマンガはそのころ描かれたもののようです。

投稿: 漫棚通信 | 2010年2月14日 (日) 10時58分

>はしもと様
ツルコミックは学校の図書館に何冊かあって、自分もお小遣いで何冊か買っていました。でもアメリカの風習とか、当時アメリカで流行っていた物などが解説なしで出てくる事もあって、よく判らない部分も多かったです。
それと「マンガを見ながら実力アップ」とか書かれていましたが、英語も上達しなかった気がします。

チャーリー・ブラウンというと絶対に勝つことがない野球チームもお馴染みですが、一度だけ勝った事があり、その時はアメリカのニュース番組でもその勝利を大々的に報じたみたいです。
ダメな人としてのチャーリーも挫けなければ勝利を得る事が出来るって事なんだと思います。でも恋愛に関しては永遠に赤い髪の女の子へ片想いし続けなんですが。

ピーナッツコミックは現在は角川書店ですね。でも発行されているのは80年代後半からシュルツさんが亡くなってしまうまでの作品だけで、本当の初期作品は刊行されないんですかねえ。
ツルコミック版の全60巻の再版でもいいですから、角川やってくれないっすかね。

投稿: 杉村 | 2010年2月16日 (火) 15時05分

>SHIN様
バレンタインデーとモロゾフの関係は「ハッキリしない」という感じなので、雑学的には微妙なんですが、でもハッキリしない、諸説ある、というのも雑学の醍醐味だとは思っています。

昔は某氏の本を読みながら「そういう事を商売に出来る人って羨ましいな」と思っていました。その頃からいくつか「それは違うんじゃ?」とは感じていましたが。
色々な文献を引っ張り出し、徐々に答えに近づいていくというワクワク感は本当に何事にも替えられない物だと思っています。
発表する時は、その結論だけみたいな感じになってしまうんですが。

投稿: 杉村 | 2010年2月16日 (火) 15時11分

>漫棚通信様
細かい調査ありがとうございます。
自分がピーナッツコミックを最初に読んだは1970年頃だったのですが、バレンタインカードとはいったい何ンぞや? と田舎の小学生は思っていました。
あと、ハロウィンに関してのネタもピンと来ませんでした。(今でもピンと来ませんが)

ただピーナッツコミックを読み返してみると、以前意味が判らなかった部分が、大人になったり知識が増えた事で笑えるようになったりしていて、漫画にしても笑いにしても知識の量によって膨らんで来るんだなあと最近特に感じるようになってきました。

投稿: 杉村 | 2010年2月16日 (火) 15時12分

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