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2008年5月20日 (火)

サインはV

戦争に関する話は難しい問題を幾つも抱えているので、安易に触れるべきではないと思うんだけど、雑学的話題としてよく出てくるネタがどうも違うんじゃないか?という感じなので、書いてみる。


指を二本たてる「Vサイン」を「ピースサイン」と呼ぶのは、チャーチルが戦争が終わった時に「どういう意味ですか?」と記者に聞かれ「これは広島と長崎に落とした2発の原爆によって戦争が終結し世界に平和がもたらされたという意味だ」と答えたという事がキッカケ。
こんな雑学がネットを検索すると、これでもか!というぐらい大量に出てくる。そしてそれについて当然のように怒りのコメントが続いて書かれている。

実はずっと雑学が好きで色々な本を読んできたんだけど、この「Vサインは2発の原爆」という話は数年前まで知らなかった。初めて知ったのがネットに書かれていた物なのだ。
その段階で疑って掛かっていた。どこかにそんな話を書いた本があるのかも知れないけれど、少なくとも自分はそれまで知らなかったという事は、一般的な説ではないのかもしれない。もしそれが事実だとしたら、もっと前から色々な雑学本などでも取り上げているハズなのに……。
そもそもあのサインを「ピースサイン」とか「ピースマーク」とか呼ぶのは日本だけ(現在はそれが海外にまで波及しているらしい:韓国では定着しているとの事)らしく、あれはあくまでも勝利「ビクトリー」の意味でしかない。

そんでもって、チャーチルが群衆に向かって人差し指と中指を立てたサインをした時に「2発の原爆」と言ったとされているんだけど、少なくとも写真に残されているチャーチル初のVサインは1945年4月30日ヒトラーが自決をした事により勝利が確認できた5月8日のこと。つまり、まだこの時点では広島、長崎には原爆は落とされていないのだ。
インタビューの受け答えに関する記事の日付がネットには一切出てこない。そのあたりも怪しい。そして、それ以前から「Vサイン」はそれなりに意味が知られているサインだったらしいので、それの意味をワザワザ問いかける記者の意図もよく分からない。

確かにチャーチルは戦争が終結した時に英下院で「原子爆弾を使用すべきでなかったという意見があるが自分はそうは思わない。日本との戦いにおいてさらに百万の米国人の生命と二十三万の英国人の生命を犠牲に供するよりはむしろ原子爆弾を使用してよかったと思う」という趣旨の事を宣言しているらしいが、それはVサインの事を述べた言葉ではない。インタビューでもないし。
そのチャーチルが語った言葉の内容が正しいか正しくないかは、戦争直後の勝利国の意見としては「そういう物」という感じで、戦争が終わって数年後には「日本に原爆を落としたことは間違いだ、あれが正しいとは思わない」とも述べている。
ついでに言うと、チャーチルがアメリカから知らされていたのは1発だけで、2発目に関しては「予定されていた事と違う」と激怒したとも伝えられている。

どうも、上記の英下院での言葉が勝手に一人歩きをして、大群衆の前で一番最初にVサインを出したチャーチルという事実が結びつき、解りやすい形、ついでに日本人を刺激する形で「Vサインは2発の原爆」という雑学が誕生したんじゃないかと思うのだ。

この原爆に関してはもうひとつ
タバコのラッキーストライクの意味は「広島に落とした原爆」の意味で、あのパッケージは原爆を真上から見た物だ
というガセネタも一時期は広まっていたが(これもネット発祥なのかな?)、ラッキーストライクは原爆投下より半世紀前に発売されていて、ゴールドラッシュの頃、金鉱を発見した時の叫び声だとされ、あのデザインも原爆投下前から使われている物なので、却下なのだ。


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コメント

 へー、Vサインは2発の原爆、という説があるんですか。知りませんでした。チャーチルのVサインは、対独戦=対ヒトラーのものだというのは、常識中の常識だと思っていましたが。

 あと、Vサインをピースサインというような誤解については、似たような事例で、親指と人差し指を立てるLサインがありますよね。これは、フィリピンのアキノ夫人が、大統領選に出馬した際の、マルコス勢力に対する<ラバン=闘争>サインだったわけですが、いっとき、日本では<ラブ>サインなんていわれていましたね。もっとも、こちらは、Vサインほどは定着しませんでしたけれど。

 でも、Vサインを「ピースサイン」というのは、井上順かなんかが、テレビのCMで、Vサインをしながら、「ピース」と口にして以来ですよね。富士フイルムだったっけかな? その頃でも、漫画なんかでは、「勝利のVサイン」というのは、当時でも定着していたように思いますよ。

投稿: 世田谷丸 | 2008年5月22日 (木) 21時26分

自分も「常識」だと思っていたんですが、「Vサインは2発の原爆」という説を数年前にネットで見かけ「それはガセネタだよなぁ」と思っていた物が、気が付いたらかなり広がっていてびっくりしたワケです。
雑学的な物に関しては「面白い物・解りやすい物は伝播力が強い」という事で、ガセでも理解しやすい(この場合は戦争絡みで批判するという愛国心を刺激する)物は、特に若い世代には広がりやすいみたいです。
昔なら、書籍などに書かれない場合はクチコミで極狭い範囲でしか広がらない話が、現在はネットであっという間に広がってしまうという怖さがあります。

親指と人差し指を立てるサインは、あの選挙の時に「マルコス陣営に敵対するサイン」とか言われてましたが、手話で「L」だったので、フィリピンの選挙戦以前から一部では「LOVE」の意味で使われていたみたいですね。
あと、小指・人差し指・親指を立てたサインは手話で、小指が「I」、小指と人差し指が「Y」、人差し指と親指が「L」なので「I Love You」の意味になるそうです。

以前書いた「こけしは子消し」という雑学も信じている人が多いみたいで
http://tisen.cocolog-nifty.com/blog/2006/03/post_111c.html
それらに共通しているのは、「チャーチルの発言は許せません」とか「子消しなどという悪い風習があった事を風化させずに」などと、すごく真面目な感想がその後に付けられるという事かもしれません。

投稿: 杉村 | 2008年5月22日 (木) 22時40分

こんにちは (^^)/。

 この話、竹内睦泰 『超速! 最新日本近現代史の流れ』 に載ってます。

 σ(^^) の持っているのは祥伝社から出ていた新書版のものですが、おそらく今の版にも出ているのではないかと思います。
 残念ながら、受験参考書なので詳しい出典が無く、竹内先生がどういう資料を元にされたのかまでは判らないのですが。

投稿: 夜帆。 | 2008年9月 5日 (金) 18時01分

チャーチルがVサインをし,新聞記者から「お得意の勝利のサインですね」といわれて,「ちがう。これは広島,これは長崎,平和のサインだ」と答えた話は,10年ほど前,戦勝国であるオーストラリアで,地元のおじいさんから英語で聞きました。「だから,写真を撮るときに日本人がVサインをするのが奇妙だ。」と。

その人は英語を話し,日本語を知りません。日本語でネットを読むことは不可能です。また,先の大戦での日本軍の残虐行為に怒りを抱いています。

たとえば,日本軍の潜水艦によるオーストリアのフェリー撃沈によって多くの市民が殺された事件についても教えてくれ,戦没者慰霊碑に連れて行かれて,いっしょに黙祷しました。

以後,私はVサインができません。
ネットのガセではないと思います。

投稿: 元広島市民 | 2011年1月21日 (金) 19時53分

>ネットのガセではないと思います。
本文にもネットのガセとは書いてないような気が…。

>どうも、上記の英下院での言葉が勝手に一人歩
>きをして、大群衆の前で一番最初にVサインを
>出したチャーチルという事実が結びつき、解り
>やすい形、ついでに日本人を刺激する形で「V
>サインは2発の原爆」という雑学が誕生したん
>じゃないかと思うのだ。
そういう日本人を刺激するガセが、ネットで物事を短絡的に考える人によって広まったという事でしょ。
そして本文に
>少なくとも写真に残されているチャーチル初の
>Vサインは1945年4月30日ヒトラーが自決をし
>た事により勝利が確認できた5月8日のこと。
>つまり、まだこの時点では広島、長崎には原爆
>は落とされていないのだ。
と書かれているよ。

投稿: 知泉読者 | 2011年1月21日 (金) 21時08分

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