それってゼロへぇ
気が付くと、雑学をメシの糧にしている自分がいる。そんなヤクザな人間だったつもりはないのに、そんな状態になっている。
以前、二見書房から「知泉」「知泉PART2」を出した当時、ブログなどの書評でこんな感じに書かれた事がある。
「この本読んだけど、俺でも知っている事が書かれている。たとえば「役所広司は俳優になる前に区役所に勤めていた」とか「千円札に使われていた夏目漱石の肖像は喪服を着ている」とか、こんなレベルで本を出せちゃうんだ...」
みたいな感じ。
ま、実際の事そうなんですが、上記の感想を書いた人は雑学的な面白さは永遠に分からないのかも知れない。だって自分が持っている知識が一般レベルと思いこんでいるから。
トリビアの泉が流行った頃、ネットのあちこちにそれ風の掲示板が乱立した事があった。そして番組を模した形で、投稿されたネタに対してみんなで点数を入れるというパターンだった。
そこでやたらと書かれていたのが「それ知っているので0へぇ」という文章。
知っているから「全然面白くない雑学」と言い切ってしまうのは、逆に経験値の低さを物語っているだけのような気がしてしまう。
「知っているけれどこれおもしろんだよな」というスタンスを持たないと、雑学なんてなりたたないのだ。
トリビアの泉では「タモリ」「荒俣宏」という趣味人で雑学人が審査していたけれど、あきらかに両人が知っているであろう雑学に対してもへぇボタンを連打していた。
点数が辛いと言われていたタモリに関してネットでは「タモリはなんでも知っているんだから点数入らない」みたいな事が言われていましたが「知っていても面白い」という物には点を入れていた。
荒俣宏に至っては「魚を針で捕獲する貝がいる(正しくは忘れた)」みたいなネタで高得点を出していた時、コメントを振られたんですが、嬉しそうに「実はこれ飼っていた事あるんですよぉ」と語った。
「知っているので0へぇ」とは全然違う観点なのだ。
もっともその時、その手の掲示板では「飼ってまでいたのならボタン押すんじゃねえよ!」みたいな書き込みがあったみたいですが。
雑学はあくまでも「面白がること」。あと「重箱の隅を突っつく事」「誰も気にしていない部分に意味を見出す事」って事かも知れない。
「当たり前じゃん」で話を終わらせてしまうと、会話も進まないし、思考も発展しない。
ニュートンの万有引力だって、ニュートンが言い出す前から誰でも物が下に落ちる事は知っていたのだ。リンゴが落ちてこなくてもそーゆー事なのだ。
たとえば、毎日通る道になにか面白い像が建っていたとする。たとえば徳川家康が歩いている姿の像だとする。
それは子供の頃から見慣れている物なので、そこにあって当たり前の像なのだ。自分的に考えれば。
ところが、その像をよそ者が見ると凄く意味が発生する場合がある。
「徳川家康が歩いている姿の像はこれが日本唯一の物である」なんて事になってしまう場合もあるのだ。
知っていたハズなのに視線をちょっと換えると実は全然知らない部分が出て来る事もある。当たり前を当たり前と思った段階で終わってしまうのだ。
で、自分は長く長く雑学に触れてきた。
本当に物心付いた頃から「本が友達」みたいな部分があって(普通の友達もいますが)、とにかく本を読み、雑学を漁ってきた人間なので、そうそう新しい雑学には接することはないけど、未だに雑学を書いた本は「雑学」という文字が背に書かれているとほぼ無条件で購入してしまう。
そして、それなりに面白く読んでしまう。たとえ100本書いてある雑学の内99本が知っている事でも、それはそれで「しょうがない」という部分と「確認」という感じで読む。
だから「知らない事柄を知る」というより「雑学」というジャンルが好きなんだろうなぁって事なのだ。
そんでもって、長くやっているとドランカーになってしまう部分も多くなるワケで、人にしゃべる時に「これは基本的に知っているので」と前置きを端折ってしまい「?」という顔をされてしまう事もある。
今、ラジオで喋っているんだけど、まずディレクターに「今日こんな雑学でどうっすか?」とメールを送るんだけど、最初の頃に言われたのが「杉村さんはインテリすぎるので、面白がるポイントがちょっと高すぎる」みたいな感じでした。
インテリなのかどうかは全然不明の部分ですが、うむ〜と思ってしまったのです。
今はそれを肝に銘じて雑学ネタを絞り込んでいる。
別にレベルを下げたというワケではなく、文章で読む雑学と、喋りだけで聞く雑学は違うんだよなぁと感じたので。
某掲示板で、ある日放送した雑学に関して「○○が○○○なんて誰でも知っていることじゃん、そんなもので商売かよ」みたいな書き込みがあった。
その手のリアクションはメルマガや単行本の時に山盛りで貰っているので痛くもないワケですが、そーゆーものなんだろうなぁと改めて思ったワケです。
そんなこんなで、ゆるい雑学があったとしてもそこは「意図的にそーしているのだ!」と思ってください。
とマジにゆるい雑学を語った時の逃げを打っておく私であります。
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