荒らげる
テレビで「今でも止まらない飲酒運転」という特集をやっていたんだけど、その中で「酒を飲んだ男性が記者に対して声を荒げた」と言っていた。
う〜むと思ったんだけど、それから数時間後、テレビは別の番組になっていた。そこでも報道っぽい内容で「電車内の痴漢」を特集していて「捜査官が声を荒げた」とナレーションがあった。
う〜む、今はついにアナウンサーも「荒げる」という表現が正しいって事になってしまったんでしょうかね?
確かに「声をあらげる」という言い方は一般的だけど、正しくは「声をあららげる」。これは漢字表記した時に「荒らげる」というのがあって、これを「荒(あ)らげる」と読んだのが最初だと言われている。実際には「荒(あら)らげる」。
こうして日本語は微妙に変わっていくのかも知れない。でもって、その事を指摘すると「今はこっちが正しいんだよ」とか逆ギレされちゃうケースもあると思うのだ。
日本語は常に変化していく言語だと思うので、それもしょーがないかなぁと思ってしまう。
いわゆる「私は識者」と思いこんでいる人が「最近の言葉は乱れている」とか嘆いたりもするワケですが、実際の事を言えばその人たちの言葉だって明治時代の人からしてみたら「その言葉遣いはなんだ!」と怒られてしまうような変な言い回しが多いと思うし、明治時代だって夏目漱石はとにかく造語大好きだったり、江戸時代の言葉とは全然違っているし、外来語を大喜びで取り入れている。
さらに江戸時代だって、その場その場で流行った言葉が平気で普通の言い回しになっていっている。
有名な処では「しだらない→だらしない」などの逆さ言葉とか。
最近では「それって全然いいね」という「全然」の使い方の変化があった。たしか1990年頃に「全然いいじゃん」という言い回しが若者言葉のように出てきた。その際にある程度の大人は「その言葉遣いは何だ?全然には否定形の言葉が続くんだ」とか言っていたような気がする。
たとえば「全然よくない」という感じに。
でも実際の事を言えば、明治時代の文献(夏目漱石とか)などを読むと普通に「全然よい」という否定形ではない言い回しが出てくる。
実は昭和になって「全然」が否定の時に使う言葉に変化してしまい、それが何故か平成になってから意図的ではない状態で明治時代の言い回しに戻ったのだ。
言葉は変化していくから面白い。
でも、時々違和感を感じてしまうってのはオッサンになった証拠なのかなぁ。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント