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2006年8月17日 (木)

たにしむすこ

日本の民話では、夫婦に子供が授かり、その子供が特殊な能力を持っていて、その結果色々あって、お金持ちになって、めでたしめでたしと言うパターンがある。
その手の話には、そんなにバリエーションは無いとは思うんだけど、今回ちょいと読んだ絵本の中に書かれていた『たにしむすこ』って話は凄い。


やはり、昔から広く知られている話ってのは、長年語り継がれている間に色々なバリエーションを産んで、軌道修正され、洗練されていくのだなぁと思ったのだ。この『たにしむすこ』はセンスもオブもワンダーも無い。読後感は「唐突」の一言に尽きるのだ。
2006081701まず物語は、お決まりのように「子供が欲しい」と願う夫婦から始まる。
で、別段神様と何か取り引きをしたとかではなく普通に子供が授かるのだが、生まれてきたのが何の前触れもなく「たにし」。田舎の川などに棲息している貝のアレ。絵本を見る限りでは「タニシから生まれたタニシ太郎」みたいな状態ではなく、タニシそのものが「生まれた」となっている。
2006081702いきなりタニシを産んだ夫婦は当たり前のようにそれを受け入れて育て始める。
普通だったらそこで(普通には生まれませんが)「なんか変な病気なんじゃないのか?」とか「おっかあ、タニシと浮気したでねえか?」「いんや、おめさが前世で悪さしたから、こったら子が出来たに違ねえ」などと一悶着ありそうなのだが、この夫婦は平然とこれを事実として受けとめて育て始める。

で、通常の民話だったら、このタニシが超人的な力を発揮し、鬼とかを征伐して、村のヒーローになってお姫様と....となるんだろうけれど、この無名の話はそんな予定調和を突き放していく。
2006081703ある日タニシが父親に「薪(マキ)を馬に積んで町で商売をしたいので、馬を買ってくれ」と言い出す。この父親はその言葉に従い馬を買ってやる。さらにタニシはタニシでしかないので薪を取ってきて馬に積み込むという過保護ぶりなのだ。
そしてタニシは町へ出かけ、どう商売をしたのかは不明だが薪を売って戻ってくる。

そこでとんでもない事を言い出すのだ。
「町で問屋の三人娘を見初めたので結婚したい。だれかひとり嫁にもらってください」と、おまえタニシという分際わきまえているのか?状態なのだ。金持ちの、しかも三人娘のどれでも良いみたいな、完璧に上から見おろした発言。
普通の民話ならば、何かを成し遂げた末に金持ちの娘と結婚するのだが、このタニシはいきなりゴール地点を要求する。

これにはさすがに父親も「しかしお前はタニシなのだから」と言い出す。そりゃそうだ、タニシなのだから。
その時タニシはいきなり「縁談の話を進めてくれないのなら、オラ囲炉裏に飛び込んで死にます」などと、アホな「運動会中止にしろ」レベルの中学生みたいな事を言い出すのだ。

父親は渋々と町へ出かけ、問屋に「うちのタニシとお宅のお嬢さんを是非結婚させたいのだが」と切り出す。
そこで何故か庄屋は「あの薪を持ってきたタニシか、よかろう」などとトンチキな事を言い出すのだ。何かが狂った世界観が展開している。
2006081704長女は「私がなぜタニシと結婚しなくてはいけないのですか?」と拒否。次女も「タニシの所へなんかいきません」と、人として当たり前の態度を示す。しかし絵本ではその二人の娘がなんか嫌な女っぽく描かれている。
そんな中、三女は「お父さんがそう言うのなら、タニシの嫁になりましょう」などと言い出し、あっさりとタニシと金持ちの娘の縁談がまとまってしまう。
当たり前に考えれば、タニシと結婚してもいいと言い出す三女って、なんか頭のネジが外れているような気がして、実際にそんな事を言い出す女がいたら怖い。

そのまま普通に夫婦生活が始まったワケですが、ある日となり村で相撲大会が開かれるのでそれを見に行く事になった。
その途中にある橋のたもとに鉄の棒をくわえた蛇がいた。
いきなりタニシは嫁に「あの鉄の棒を取ってくれ」などと、またしてもワガママを言い出す。
無理難題を渋々聞いてなんとか鉄の棒を手にいれた時、いきなりタニシが「その棒で私を叩きつぶしてくれ」と、さらに無茶な事を言い出す。
ためらう嫁に「いいから早く叩きつぶしてくれ」と催促をするタニシ。
タニシと結婚する女と、俺を叩いてくれと要求するマゾのタニシ。
2006081705嫁は「そこまで言うのなら」と鉄の棒でタニシを叩きつぶすのだ。おいおい、自殺幇助か?
そこで物語はいきなり大団円を迎える。
そのとたんにタニシは背の高い青年になりました。それから嫁と青年は仲良く暮らしましたとさ。
話の中心が見えない....。
2006081706普通の夫婦に別に何も悪いことも良い事もしていないのにタニシが生まれ、そのタニシが何故か本来は背の高い青年だったと。
悪い魔法使いに姿を変えられとかでもない、それ以前にタニシである必然性がどこにも無い。
民話って凄いっす。奥が深すぎて、何を言いたいのかよく解らないっす。


タニシの豆知泉
昔からの迷信的民間療法でタニシは重宝されてきた。 たとえば肺炎になった時は「タニシを石の上でつぶして呑む(福島県・茨城県)」「シジミやタニシの煮汁を飲む(鹿児島県)」「タニシの殻をとってつぶしたものを搾りぶどう酒を混ぜて飲む(和歌山県)」、結核になった時は「タニシとニンニクを練りつぶして飲む(愛知県)」などの方法が言われてきた。残念ながら医学的効能はほとんどない(いわゆる偽薬効果・プラシーボはあるかも知れないけれど)
食の大人・北大路魯山人は幼少のころ医者にも見離されるような大病を患ったことがある。虫の息で好物だったタニシを食べたがったので「どのみち助からないから」と家族がタニシを食べさせたら治ってしまった。 そのため、命の恩人である(と勝手に信じていた)タニシを北大路魯山人は好んでいた。が、北大路魯山人の死因は宿主のタニシからもらったカンゾウジストマによる肝硬変。
貝原益軒の『養生訓』には、食い合わせの悪い例が色々書かれているが(トンデモが多い)、豚肉とタニシをいっしょに食べると眉毛が抜けてしまうらしい。(なんじゃそりゃ)
手塚治虫が博士号を授与されたときの論文のタイトルは「異型精子細胞における膜構造の電子顕微鏡的発生機序」。解りやすく言うと「タニシの精子の研究」
ちなみに手塚治虫は医学博士号で医大を卒業して医者の免許を持っている的なことをよく言われるが、それは正しくない。 手塚が卒業したのは「大阪帝国大学医学専門部」で、「大阪医大」でも「大阪大学医学部」でもない。医学専門部というのは太平洋戦争中に軍医が不足してしまったために、医学部とは別に急遽造られた特別な学科で、手塚が卒業したのと同時に廃止になっている。卒業しても取れる資格は専門学校卒レベル。 (逆にこれが手塚のコンプレックスだったとも言われる)

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コメント

やっぱり杉村さんの漫画はいいなぁ。
似顔絵も良いけど、漫画の方が絵に動きがあってより楽しいです。

投稿: おおつぼ | 2006年8月20日 (日) 21時54分

返事おそくなりましたが、ありがとやんす
なかなか絵を描くのはパワーがいるので、絵を描いている間それを持続させるのが難しいです(書き始めるのもパワー必要で)
実はこの「たにしむすこ」の絵は、下書き無しで、筆ペンでいきなり書いた物でありまして、時間はほとんどかかっておりませんです。

投稿: 杉村 | 2006年8月26日 (土) 06時30分

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