もとまろ「サルビアの花」
もとまろ/サルビアの花
作詞.相沢靖子/作曲.早川義夫
1972年00月00日/¥400
この曲は元々、早川義夫(元ジャックス)がソロアルバム「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」の中で歌っていた曲で、それが有名になったのは1972年に女子大生の3人組「もとまろ」がカバーした事から。
ジャケットを見ると、あの時代の女子大生のファッションセンスって... という感じですが。
当時のヤマハ関係のコンテストでも歌われたみたいで、ポプコン(ヤマハのポピュラーコンテストの略称)関連の番組でもよく流れていた。自分はリアルタイムではなく、70年代中期以降に知った。
早川義夫「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」

前半では「♪いつもいつも思っていた」と好きな女性の部屋にサルビアの花を投げ入れたい、女性のベッドにサルビアの花を引き詰めたいと妄想している。そこで歌われている「サルビア」というのが何を意味する暗喩なのかはよく解らない。
個人的にサルビアにはそんな悲しげなイメージも抱けないし、子供の頃「サルビアの花をつみ取ってその花の下部分をチューチュー吸うと甘い」と聞いてチューチュー吸った記憶はある。でも、戦後すぐの甘さに飢えていた欠食児童ではないので「ふうん」ぐらいにしか思わなかった。
ちなみに、サルビアは意外な事に「シソ科」の植物で、ハーブとして有名な「セージ」もサルビアの一種らしい。(雑学ワンポイントメモ)
サルビア(写真「植物園へようこそ」さん)

「♪(教会の)扉が開いて出てきた君は…」
相手の女性側からしてみれば、結婚式を挙げているときに、そこに呼ばれもしない男がノコノコと出現しちゃってジトーッとこっちを見ているという状況。そして彼女の事を「偽りの花嫁」と言い放つ。
そこには「金色夜叉」並の壮大なドラマが存在しているのかも知れませんが、彼女は「♪頬をこわばらせ僕をチラと見た」これって完璧に嫌われているというか…。そもそも男は「元彼」でもなく、普通に告白されて断った男という感じだし、一方的な濃縮還元的思いこみで、女性側からしてみたらただの嫌がらせなのかもしれない。
大瀧詠一「恋するカレン」

それに対してこっちの曲ではラストは「泣きながら君の後を」と新婚旅行に出かける車の後をうわんうわん泣きながら追いかけて走っているかのような状態(状況の詳しい説明は歌詞には出てきませんが)。
おいおい、ただの恋愛ホラーだよ。
なんか中学の頃に聞いた時は「みっともない男だけど、純愛だよなあ」と思っていた気がするんだけど、改めて聞くと、ただの「ストーカーソング」なのだ。
猫「雪」

作詞作曲は吉田拓郎なんですが、歌詞の内容は「雪の降る中、見知らぬ街角ですれ違った見も知らぬあなたの後をずっと追いかけていた」という物。要注意人物なのだ。今の物騒な時代だったら、いきなり通報されてしまっても文句言えないような主人公なのだ。(好きな曲なんですけどね)
文学的というのは危ない面も多々あって、かの梶井基次郎の「檸檬」なんて小説も、本屋に行った時に持っていたレモンを「これが爆弾だったら俺の憂鬱もろとも本屋を破壊できるのになぁ、ふひふひ」と妄想全力疾走で、オチもなく終わってしまう。純粋な文学ってのはそんな物なんだろうなぁ。
岩淵リリ「サルビアの花」
オリジナルの「早川義夫」、元祖カバーの「もとまろ」は有名なんですが、同じくシングルを出した「岩淵リリ」、さらにはアルバムでカバーしている「ウィッシュ」「あがた森魚」「チェリッシュ」「ダ・カーポ」「ジャネッツ」「ベル」「川奈真弓」「本田路津子」「NOW」「草間ルミ」「あらきなおみ」「市原真由美」などや、大御所「因幡晃」「加藤登紀子」も、さらには歌謡曲側「天地真理」「山本リンダ」「じゅんとネネ」なども70年代にカバーしている、それ以降1980年代に入っても「あみん」「甲斐よしひろ」「岩崎宏美」「鳳蘭」などジャンル不問の人々がカバーをし、近年でも「大石円」や「井上陽水(アルバム:UNITED COVER)」、今世紀に入っても関西出身歌手「LOU」が2001年のデビューアルバム「SEARCH&LOVE」でカバーしている(他にもいるかも知れません)
しかし、結婚式が終わって新婚旅行に出かけようとするとき、車の後ろを昔付き合っていた相手(あるいは振っただけの相手)が泣きながら追いかけてきたら怖いよなぁ。
オオタスセリ「ストーカーと呼ばないで」

歌詞の方は本人のブログに全部掲載されていて、かなり怖いです、「オオタスセリ:私の観察日記」
でも怖いながらも、なんか全然解らないってワケじゃないのが悲しい。なんか扱いが非常に難しい曲ではあります。
ちなみに、オオタスセリさんとはかつて「ペコちゃん」というコンビ名で80年代から活動していた女性お笑い芸人さんです。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
いつも読ませていただき、慧眼に恐れ入っております。
結婚式、「偽りの花嫁」、泣きながら追いかける。
当時を生きていた者としては(ガキでしたが)映画「卒業」がモチーフだと思います。ダスティン・ホフマンは「偽りの花嫁」を強奪したが、「ボク」はそれもできず、じとっと見つめ、歌ってる(?)だけ…。
「卒業」は当時、アンチ・ヒーローの映画でしたが、早川先生あたりにはあれも立派な「ヒーロー」であり、「卒業」のラストシーンを夢見つつ夢破れるキモメンこそがリアルなんじゃ〜、という叫びでは、と愚考。
そういえばその頃「ダスティン・ホフマンになれなかったよ」大塚博堂という曲がありましたが、どういう内容かは知らない。
投稿: ask | 2008年12月29日 (月) 06時07分
あの時代は恋愛にも熱血が大いに導入されていたって部分もあって、
名作「愛と誠」の岩清水くん「君のためなら死ねる」も成立していたんでしょうけど、
それも70年代終わりには小林まことの「1・2の三四郎」ではギャグになっていました。
大塚博堂の「ダスティン・ホフマンになれなかったよ」も、主人公は結婚式を教会で上げる元カノを遠くから眺めています。
さらに時が過ぎて、その元カノは二人の母親になっているのに主人公はまだグジグジとその時の事を悔やみ続けています。
あの時代だったら、純愛だったのかもしれませんが、今の時代だとキツイっすね。
松本隆が以前書いていたのですが「曲は古くならないが、歌詞はその世界観がすぐ過去の物になってしまう」そうです。
投稿: 杉村 | 2009年1月 4日 (日) 22時18分
「サルビアの花」を久しぶりに偶然聞いて懐かしくなり、ネットを検索していてこちらにおじゃましました。
いい曲だけど身勝手な男だと私も思っていました。
「恋するカレン」も何であんな内容にしたんだろうと思っていました。
「雪」は昨年吉田拓郎がオールナイトニッポンゴールドでこの歌について語っていました。
・まだ売れていない頃、東北のラジオ局が何度も読んでくれて出演した。
・仕事が終わった後、年上の女性ディレクターが居酒屋で食事をさせてくれた。
・冬のある日居酒屋から帰る際、前を歩くそのディレクターの後姿を見て想像をふくらませて書いた歌詞とのこと。
概ねこんな内容を語っていました。
これを聞いてから改めて「雪」を聞くと、とっても良い曲に感じています。
投稿: TOKU | 2013年3月 3日 (日) 19時14分
馬鹿には暗喩が分らない、っていう典型だな。
投稿: teku | 2020年3月19日 (木) 00時35分